Column コラム

Vol.31【自動車業界の認証不正事案~あなたの会社は大丈夫?~】

今回のコラムでは、以下のラインナップでお送りいたします。


 

2023年末にダイハツ工業が国内外の自動車の認証試験で不正を行っていたことが発覚しました。そして、2024年6月4日には、トヨタ自動車を含む国内自動車メーカー5社も型式認証試験で同様の不正を行っていたことが明らかになりました。
不正は30年以上にわたり、衝突試験、燃費測定、排ガス試験などの安全性や環境性能に関わる分野で行われてきました。メーカー側は「国の認証試験よりも、より厳しい条件で行われたものであり安全性に問題ない」と主張してきましたが、法律で定められた基準に合致しないため、不正行為と判断されました。しかし、認証制度自体が時代の変化に対応できていないという指摘もあります。認証制度には大変時間がかかり、制度と現場にギャップが生じているのも事実です。このような状況の中、短期間の開発スケジュール、納期やコスト圧力、親会社からの過度な期待、そしてそれに応えようとする子会社の誤った奮起が不正行為の原因として挙げられています。
この不正は、国内の全工場の生産・出荷停止、リコール、賠償など、自動車業界全体の損害と信頼の失墜を引き起こしました。そのため、法令順守の意識を問う声が強まっています。
これを機に、自社にも同様の不正がないか、不正が常態化していないかを見直してみましょう。
※本内容は、西岡氏へのインタビューを基に再編集したものです。
LINEUP1:認証不正事案の背景と影響

1:認証不正事案が起こる理由

 
認証不正事案とは、安全性や環境性能を確認する際に、実際のデータと異なるデータを提出したり、不正な手段で基準をクリアしたりすることです。このような不正が起こる理由には、以下の点があります。

 
不正を行った従業員の声には、次のようなものがあります。

 

2:認証不正事案の影響とリスク

 
認証不正事案は、企業にとって深刻な影響とリスクをもたらします。具体的には、次のような影響があります。

 



LINEUP2:認証不正事案の予防と対策
LINEUP1では自動車業界における認証不正事案の背景と影響について見ていきました。認証不正事案が明らかになることで、企業の信頼性と社会的責任が問われています。このような不正を防ぎ、再発を防止するためには、企業がどのような対策を講じるかが重要です。
LINEUP2では、認証不正事案の予防と対策について見ていきます。経営方針と体制、そして事案発生時の危機管理計画と対応について考えていきましょう。
 

1:予防するための経営方針と体制

 
認証不正事案を予防するためには、経営層が率先して不正行為を排除する方針を明確にし、それを徹底的に浸透させることが必要です。また、不正行為の発生や発覚の可能性を低減するために、以下のような体制を整えることが重要です。

また、労働者が法令違反や不正行為を内部で報告できるように、相談制度を設けていると思います。この制度が形髄化し、相談、報告、通報者が処分されるような状態になると、通報者保護法違反や安全配慮義務違反などの法律に抵触することとなります。企業は、相談制度を適切に運用し、相談、報告、通報者を保護することが求められます。
 

2:危機管理計画と対策

 
認証不正事案に対応するためには、事前に危機管理計画を策定し、事態が発生した場合に迅速かつ適切に対処できるように準備することが必要です。事態の収束後には、以下のような対策を講じることが重要です。

 



LINEUP3:認証不正事案から学ぶべき教訓
LINEUP2では認証不正事案の予防と対策について見ていきました。LINEUP3では、この認証不正事案が示す自動車業界の課題や、企業が学ぶべき教訓について考えてみましょう。
 

1:認証不正事案が示す自動車業界の課題

 
今回の認証不正事案を受けて、自動車企業の社長たちは会見で以下の課題を挙げました。

また、社長たちは会見で「不正の撲滅は無理。起こったときに異常が分かること。間違いが起こったときに立ち止まり、すぐ直すサイクルを回していくことが大切だ」と述べましたが、不正行為の撲滅には、継続的な努力と包括的な対策が求められます。
 
さらに、労働環境問題、コンプライアンス、技術革新や製品開発の必要性など、迅速な対応が求められます。
 

2:認証不正事案から学ぶべき教訓

 
認証不正事案から学ぶべき教訓としては、以下のようなものがあります。

 

3:あなたの会社は大丈夫ですか

 
認証不正事案は製品の安全性や品質だけでなく、企業の信用や社会的責任の観点でも大きな影響を与えます。不正を防ぐために、以下の対策を行いましょう。

認証不正事案は、企業の存続にかかわる問題であり、法令や規則を遵守し、不正行為を許さない姿勢を示すことが重要です。
 

4:まとめ

 
あなたの会社が認証不正事案に関与していないとしても、安心してはいけません。企業間において相互連携を図るなか、一社の問題が他社に影響を及ぼすことがあり、不正行為が発覚した場合、業界全体に信頼の低下や規制強化のリスクが生じることがあるのです。認証業務は、製品の性能や環境への影響を評価する重要なプロセスです。認証業務においては、正確なデータや方法を用いて法令や規則に従い、品質管理体制や内部統制を強化し、不正行為を発見/報告/是正できる仕組みを整備することが必要です。
 
競争が激化する中で、企業には技術力だけでなく信頼性も求められます。認証不正事案は企業への信頼を低下させ、消費者の安全や環境にも悪影響を及ぼします。
あなたの会社も、認証不正事案を防ぐために、認証業務に関する法令や規則を遵守し、不正行為を許さない姿勢を示すことが求められます。認証業務に該当しない企業についても、法令順守と信頼性の向上を意識することで、安心感を顧客や取引先に提供することができるのです。
 
日本企業は自動車業界をはじめ、最先端の技術や重要インフラに関する情報を保有していますが、外国への情報漏洩のリスクにさらされています。そのため情報漏洩を防ぎ国益を守るため、本年5月、セキュリティクリアランス制度を創設する法律が成立しました。政府は年内を目標に「適正評価」に関する運用基準を策定する考えを示しています。
認証業務にかかる不正行為を起こさないとともに、セキュリティクリアランス制度の導入による情報漏洩の防止により、ステークホルダー及び他国との信頼関係を構築していくことも併せて重要です。
 

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